当院には、日本臨床肛門病学会技能指導医が在籍し、安全確実な手術療法を行っています。
痔の程度により手術をしないで治療する硬化療法と硬化療法の適応外の痔に対しては、手術療法を行っています。

痔の種類

痔は次の3つに大きく分けられます。

直腸肛門部の血行が悪くなり、血管の一部がふくれあがる痔核。硬い便によって肛門上皮がさける裂肛。細菌感染が原因で、膿が出る肛門周囲膿瘍・痔瘻です。

痔核

痔核には、歯状線よりも上の粘膜の部分にできる内痔核と、下の皮膚の部分にできる外痔核があります。普通、痔核という内痔核をさします。

痔核

裂肛になると排便時に痛むため、トイレをがまんしてますます便が硬くなり、悪化することがあります。こうなると傷が慢性化して肛門潰瘍となり、肛門が狭くなってしまいます。そして、ますます便が通りにくくなり、傷がひどくなるといった悪循環を繰り返すことになります。

症状

  • 排便時と、その後もしばらく痛みが続く。
  • 出血は紙につく程度。

痔瘻(じろう)

直腸と肛門のさかいめ、つまり歯状線の小さなくぼみから大腸菌などが入り込み、直腸と肛門の周囲が化膿したものを肛門周囲膿瘍といいます。膿瘍(おできのようなもの)が切開されるか、あるいは自然に破れたりするとうみが出て、直腸、肛門とつながった膿の管ができます。これを痔瘻といいます。

症状

  • 肛門周囲の皮膚に出口ができて、膿が出る。
  • 出口がなかったり、出口がふさがると痛みと熱が出る。

痔の硬化療法・手術療法

痔の程度により手術をしないで治療する硬化療法と硬化療法の適応外の痔に対しては、手術療法を行っています。どちらの方法が最適かはご相談ください。

硬化療法手術療法
入院期間日帰り、もしくは1泊2日約1週間前後
※場合によっては、日数の短縮及び日帰り手術も可能
手術費用約3万円約6万~8万円
※負担金3割の場合(食事・療養費を含む)

硬化療法

局所麻酔で、商品名ジオン注射(硫酸アルミニウムカリウム水和物・タンニン酸注射液)を痔核内へ注入することにより、内痔核を切らずに脱出と出血を治療し、硬化退縮させます。約10分程度の手術で、日帰りもしくは1泊2日で治療ができます。

ジオン注による治療法とはどんなものでしょうか?
「脱出を伴う内痔核」にジオン注を投与して痔に流れ込む血液の量を減らし、痔を硬くして粘膜に癒着・固定させる治療法です。痔核を切り取る手術と違って、痔核の痛みを感じない部分に注射するので「傷口から出血する」「傷口が痛む」というようなことはなく、入院期間の短縮も期待できます。

ジオン注とはどんな薬でしょうか?
ジオン注の有効成分は硫酸アルミニウムカリウム水和物とタンニン酸というものです。

・硫酸アルミニウムカリウム水和物:出血症状や脱出症状を改善する。
・タンニン酸:硫酸アルミニウムカリウム水和物の働きを調整する。

有効成分の頭文字からALTA(アルタ)とも呼ばれます。

どのようにジオン注を投与するのでしょうか?
ベッドで横になっていただき、肛門鏡を挿入してから局所麻酔薬入りのジオン注を注射させていただきます。痛みはほとんどなく、約10分程度の注射で済みます。

ジオン注はひとつの痔核に対して図のように4か所に分割して投与します。これは痔核に薬液を十分に浸透させるための方法で、四段階注射といいます。複数の痔核がある場合は、それぞれに投与します。投与後しばらく点滴を続け、麻酔の影響がなくなるまで安静にする必要があります。

ジオン注を投与するとどうなるのでしょうか?

投与後の早い時期に痔核へ流れ込む血液の量が減り出血が止まります。脱出も軽くなります。

投与した部分が次第に小さくなり、引き伸ばされていた支持組織が元の位置に癒着・固定して、脱出がみられなくなります。(1週間~1か月)

  • 出血がみられなくなります。
  • 脱出や肛門のまわりの腫れがなくなります。

ジオン注の投与後の経過は?

2日程度で出血が軽減し痔核が縮小します。約1か月で痔核が退縮します。

手術療法

腰椎麻酔下に

  • 痔核に対しては流入動脈を結紮後痔核部分を切除します。
  • 裂肛に対しては裂肛部分の切除を行います。
  • 痔ろうについてはろう孔部分を切開開放し、ろう孔内腔を十分に掻爬(そうは)切除します。

いずれの創部も開放創とします。

肛門疾患に対する注意

規則正しい排便習慣を身につけましょう。

便通を整える為に食物繊維や水分を摂る

便意があったら我慢しないでトイレに行く

トイレに長居をしない・いきむのは3分以内・無理に出さない

下痢を防ぐためにアルコール類、香辛料は控える

腸の働きをよくするために適度な運動をする

便秘の原因になる無理なダイエットはしない

おしりを清潔にしましょう。

坐浴をおこなうあるいは温水洗浄式便座を使う。
「水圧は弱めに」「温度に注意」「刺激しすぎない」おしりに力がかからないように便器の上に洗面器をおいておしりを洗います。

洗った後、おしりをよく乾かす。
乾燥機能のない場合は清潔なタオルなどで軽くおさえるようにします。

お風呂に入って血行をよくする。
お風呂に入る時は、石鹸でゴシゴシ洗うのではなく、お湯で流すようにしてください。